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健康と人生の明暗を分ける要因2

2014/08/31

現代人に蔓延「反応性低血糖」とは何か?

 

糖尿病は、血糖値が高くなる病気であることはよく知られています。しかし、その前段状態が、低血糖だと述べると、頭が混乱しそうになるかもしれません。そこで順を追って説明しましょう。
急速な血糖値の上昇が起こると、膵臓は、あわてて大量のインスリンを放出します。その結果、急速な血糖値の降下を引き起こしますが、血糖値がちょうどよいレベルまで下がったときには、血液中に大量のインスリンが残っていることになります。それで、今度は、時間が経つにつれて、血糖値が下がりすぎるという現象が起こります。これが、 反応性低血糖と呼ばれる状態です。そうすると、脳、神経系がエネルギー不足になりますから、集中力の低下、疲労感、空腹感などが起こり、また血糖値を急速に引き上げる食品が食べたくなります。

また、グリコーゲンを分解して血液中に放出し、血糖値を引き上げるホルモンには、グルカゴン、糖質コルチコイド、アドレナリン、成長ホルモンがありますが、急速な血糖値の低下に対しては、アドレナリンの放出が起こる傾向があります。アドレナリンが分泌されると、人間は攻撃的になる傾向があります。これが空腹時のイライラ感の原因になります。
反応性低血糖がひとたび起こると、また血糖値を急速に引き上げる食品として甘い菓子類や白米、白いパン、うどんなどの精製された穀物、スナック菓子、ビールや日本酒などの糖質を多く含むのを無性に摂りたくなる傾向があります。

極めつけは、甘い清涼飲料類で、例えばコーラ飲料350mlには、砂糖が約40gも含まれていますが、そういったものをいったん摂りはじめるとだんだん習慣になっていく傾向があります。

しかも、反応性低血糖を繰り返すと、膵臓の反応はより過敏になり、インスリンを放出しやすくなるので悪循環します。つまり血糖値のアップ、ダウンは激しさを増してゆくのです。そして、ダウンしたときには、より低い血糖値の状態が現れるようになります。

血糖値が非常に下がった状態は、炭水化物の中でも特に甘いものへの渇望を引き起こしますので、これがドカ食いの原因にもなります。

 

そして依存性になりキレやすくなる

 

ひとつのポイントは、人間の体の中で、脳神経系は、原則として炭水化物だけを通常のエネルギー源にしています。ですから、血糖値のアップ、ダウンに反応しやすいのです。 血糖値が上昇すると、脳は、エネルギーを得やすくなるので、一時的に気分がよくなりますが、その後、急速に血糖値が下がる過程では、ストレスを感じます。不安や落ち込み、ネガティブな思い込み、被害者意識、苛立ちや怒りなどが起こりやすくなるのです。

そして、そういった状態の時にアドレナリンの放出が起こると、しばしば「キレる」と表現される、怒りの爆発を引き起こします。
しばらく前に、「キレる」子供が増えているということが盛んに問題にされていました。最近では、「キレる」大人が増えていることが問題になっています。

40代、50代でも、街中や、交通機関の中でつい、かっとなって、暴力を振るうといった事件が多発しています。
こうした問題の背景には、社会全体にストレスが蔓延していることもありますが、反応性低血糖を起こしている人が増えているということの氷山の一角ではないかと思えるのです。
子供のころから、過度に精製された食品(ファーストフード、ジャンクフード、スナック菓子などがその典型)や甘い清涼飲料類になじんできた世代が、キレやすくなり、その世代が中高年を迎えるにつれて、糖尿病へと移行してゆく、そんな図式が見えてきます。
反応性低血糖という状態が、実は糖尿病の前段状態であることから、膨大な予備軍が形成されているわけです。また、最近では、清涼飲料水を飲みすぎて、急性の糖尿病、いわゆるペットボトル症候群(正式には、清涼飲料水ケトーシス)を起こして緊急入院する患者数も激増しています。

また、それをきっかけに、Ⅱ型糖尿病を発症してしまうケースもあります。本来、Ⅱ型糖尿病は、急激には発症しないとされてきたことから、専門医でさえⅠ型糖尿病と誤診してしまうケースも起こっています。

なお、血糖値の急激な降下と低血糖状態は、脳に多大なストレスを加えます。そのため大量のアドレナリンの放出を促す場合があります。さらにこれらのアドレナリンの分解が追いつかずに酸化すると、アドレノクロムという幻覚物質に変わります。
今から半世紀も前に、エイブラハム・ホッファーというカナダ人の医師が、このアドレノクロムこそが統合失調症の原因とする学説を発表しました。そして、大量のナイアシンとビタミンCによってアドレノクロムの発生を防ぎ治療できることを証明しました。こうして同博士は、分子整合精神医学という新しいジャンルを開きました。

※しかし、この学説や治療方法に対しては多くの圧力がかけられて、否定する主張が多く行われています。しかし、私自身は、統合失調症が低血糖症状で、血糖値を安定させることに加えて栄養療法で実際に改善した実例を確認しています。また、うつ病と診断された事例でもまた、血糖値を安定させることと栄養補給によって改善した実例を確認しています。

 

問題の「インスリン抵抗性」はこうして起こる

 

反応性低血糖と呼ばれる、血糖値の急激な上昇と、降下を繰り返しているとき、インスリンは、過剰分泌が繰り返されています。骨格筋細胞、脂肪細胞の細胞膜表面には、インスリン・レセプターが、細胞1個当たり、数十から数十万個とかなりのばらつきをもって存在していますが、インスリンの過剰分泌が繰り返されると、ダウンレギュレーションといって、細胞はレセプターの数を減少させてしまいます。

さらに、過剰な糖分が、細胞に押し込まれるということが繰り返された結果、GLUTと呼ばれる、細胞の中へ、糖分を運ぶ仕組みの機能も低下します。

また、脂肪細胞は、通常では、アディポネクチンといって、インスリンの働きをよくする物質を分泌しているのですが、肥満になると、この分泌が低下してしまいます。つまり、反応性低血糖の状態が繰り返されることで、インスリンが効きにくい体になり、それでインスリンをもっと分泌するようになる、こうしたことが悪循環的に進行して、ある段階で、インスリンの分泌が追いつかなくなったり、膵臓が疲弊してしまったりすることで、血糖値が高いままにとどまるようになります。

本来、血糖値が高くなると、インスリンの分泌が刺激されて、血糖値は下がり、ちょうどよい範囲に収まるという、ホメオスターシス(恒常性)が機能するのですが、それが破綻するわけです。そして、血糖値がある水準を越えると、血液中にだぶついた過剰な糖分自体が、糖毒性と呼ばれる毒性を発揮し、インスリンの働きを妨害するようになります。こうなると、更なる悪循環が始まります。そして合併症が現れるまでには、さらに話の続きがあります。

また、糖尿病に至らなくとも、血糖値が激しくアップダウンする状態は、老化の促進要因になるといいます。アンチエイジングの世界的権威である、クロード・ショーシャ博士も、ニコラス・ペリコーン博士も、細胞に糖分が急激に押し込まれる過程で、細胞膜に炎症が起こることと、だぶついた糖分が、たんぱく質と異常な形で結合する(グリケーション)により、AGE(奇しくも、年をとることを意味する’AGE’と同じスペルです)と呼ばれる有害物質を生み出して、これが細胞の機能を劣化させ老化を促進するといいます。

糖尿病の指標に用いられるHbA1cという数値は、実はヘモグロビンと糖分がグリケーションを起こしたものの量を示しているのです。

更に近年明らかになったところによると、アルツハイマ-型痴呆の原因となるアミロイドβ蛋白質を分解する酵素が存在し、それは、インスリンを分解する酵素と同じもので、ネプリライシンと呼ばれます。そして、この酵素がインスリンを分解するために消耗されることで、アミロイドβタンパク質の分解ができなくなり、その結果アミロイドβタンパク質が脳内に蓄積し、アルツハイマー型痴呆が発症することになるといいます。

北欧の研究では、アルツハイマー型痴呆を発症する人は糖尿病にかからない傾向があるとされていますが、これは、血糖値の乱高下とインスリン抵抗性という本質的に同じ問題が起こっていて、インスリンを分泌する能力が低い人が糖尿病になり、インスリンを分泌する能力が高い人がアルツハイマー型痴呆になると考えれば辻褄が合うのです。事実、日本でも糖尿病患者と糖尿病予備軍は、アルツハイマーを発症するリスクが4.6倍あるとする研究があり、特にインスリンの投与を受けている人がなりやすいと報告されています。

 

血糖値を安定させること、これがキーワード

 

このような理由によって、糖尿病、肥満、アルツハイマー性痴呆などを防ぐ方法は、全て「血糖値を安定化させること」の一言につきます。ただし、脳、神経系は、専ら炭水化物にエネルギーを依存していますから、炭水化物を抜くのではなく、十分に摂取しながらである必要があります。

そのためのポイントが幾つかあります。まず、グリセミックス・インデックスが高い、精製された穀物(白いご飯、パン、うどんなど)の割合を減らし、できるだけ精製度の低い穀物に置き換えることです。また、精製された穀物の量を減らすことです。例えば、食事の時に白いご飯を2杯食べていたのであれば、1杯に減らして、その分野菜などに置き換えることです。

また、たとえ、精製された穀物を食べていたとしても、食べ合わせによってカバーできます。血糖値を安定化させる要素として大きいのが、食物繊維、豆類、酸(トマトや酢など)です。また、タンパク質や脂肪、酵母発酵食品も血糖の吸収を穏やかにします。

食べる順序も大きな影響を与えます。食事の最初に野菜(食物繊維)か、豆、豆加工食品(代表的なのは豆腐)から食べ始めたほうが、最初からご飯やパンから食べ始めるよりも血糖値の上昇が抑えられることが分かっています。

精製された穀物の中では、パスタは、比較的グリセミック・インデックスが低め(65程度)です。パスタにトマトソース、豆乳ソースなどの組み合わせは、血糖値を安定させやすい食事パターンです。

 



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