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高GI食品の誘惑

 それなのに、なぜ人は、GIの高い食品に惹かれるのでしょうか? それは、先ほど触れましたストレスと関係があります。先ほどは、慢性的なストレスが、最終的には大脳辺縁系にダメージを与えるという事を説明しました。そういう状態になると、大脳でセロトニンやドーパミンといった脳内神経伝達物質の合成が低下してしまうのです。そうなると、集中力や気力が低下し、不安が増大し、落ち込んだり、怒ったりしやすくなります。
 そのとき、高GI食品を摂って、急激に血糖値が上がり、インスリンが多く分泌されると、セロトニンの原料になるトリプトファンというアミノ酸が、一時的に脳の中に入りやすくなるのです。
そうなると、一時的にセロトニンの合成が進み、気分が上向きます。但し、一時的なもので、あとで血糖値が下がったときには、もっと気分が悪くなります。
しかし、高GI食品を食べる事で一時的に気分が向上したという事が脳への刷り込みになってきます。つまり、これは一種の中毒です。
一方では、セロトニンの原料になるトリプトファンやドーパミンの原料になるチロシンなどへの潜在的欲求から、それらをより高濃度で含むという意味で動物性食品への欲求を引き起こす側面も考えられます。
 ハンバーガーにコーラ、ミルクシェイキとチョコレート!!まさに最適な中毒食品となるのです。

更なる促進要因「リーキーガット」

 ここで、炎症によるフリーラジカルの激増を招く要因をもうひとつあげることができます。それが、リーキーガット・シンドローム(腸管浸漏症候群、LGS)です。
 人間の腸、特に小腸は、正常な場合には、500ダルトン以下の分子しか吸収しないといわれます。たんぱく質で言えば、アミノ酸まで消化されれば通過できても、未消化なままでは通過できないのです。ところが、腸壁に異変が起きて、未消化なたんぱく質や細菌毒素、あるいは細菌そのものが腸壁を通過して血液に混入してくるという事が起こりえるといいます。これがリーキーガット・シンドロームです。そうなると、免疫系が動員されて、抗体を作ります。
そういうことが急速に起これば、蕁麻疹のような形で現れるでしょう。しかし、もっと隠然とした形で慢性的に起こっているケースが多いといいます。
免疫系の中でも、白血球全体の指揮をとる役割のヘルパーT細胞には、二つのタイプが存在する事が分かっています。ひとつは、Th1、これは、主にマクロファージやキラーT細胞などを通じて、細胞性免疫を司っています。通常はこのタイプが優勢です。もうひとつは、Th2、これは主に、リンパ球B細胞を通じて液性免疫を司っています。これら二つのタイプはお互いにけん制しあっており、Th1が増えればTh2は減少、Th2が増えればTh1が減少するという関係です。
リーキーガット・シンドロームが起きると血液中に異物が増えますが、そうなるとTh2が優勢になります。このTh2優勢という状態こそが、アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症など、T型アレルギーの素因といわれます。Th2が優勢で、免疫系がナーバスになっているところに、アレルゲンとなる物質が侵入して発症するというわけです。
 作られる抗体のクラスが、IgEであればT型アレルギーになりますが、IgGであれば、V型アレルギーの慢性関節リウマチなどに結びつくとも考えられています。
 リーキーガット・シンドロームが原因で起こるといわれる疾患は、ほかに動脈硬化、うつ、統合失調、痴呆、多発性硬化症など様々な自己免疫疾患が挙げられています。
ただし、リーキーガット・シンドロームは、現代人の約7割に起きているとも言われます。大部分は自覚症状なく起こっているという事です。リーキーガットが起これば全身的に炎症反応が起こり活性酸素が増加しているはずです。

「ルロウ形成」が慢性的な酸欠を起こす

 血液を生きたまま特殊な顕微鏡で観察するLBAが注目されています。これで観察すると、現代人の多くに、赤血球がコインを重ねたようにくっつき合う、ルロウ形成という状態が生じているのが分かります。ルロウ形成の原因は、飽和脂肪の取りすぎやミネラルのアンバランス、脱水などが指摘されています。しかし、赤血球の細胞膜表面は、マイナスに帯電し、電気的に反発しあっているので、その力に打ち勝って赤血球同士をくっつけられるものは、抗体と、フィブリノゲンしかないといわれます。フィブリノゲンは、傷口ができたときに血液を凝固させるもので、この場合には、赤血球は血餅といって、不規則な塊になります。これは、ルロウとは明らかに違います。となると、ルロウ形成の根本原因は、血液中の抗体過剰であると考えられます。
 私どものこれまでの観察では、アレルギー症状があるということと、ルロウ形成が見られるということの間には明らかに相関性がありました。
 理論的にも、リーキーガットが起これば、抗体が増加し、ルロウ形成が起こる確率が高いはずです。
 人間の毛細血管というものは、もっとも細いところでは、赤血球が一列でしか通れません。ルロウ形成が起これば、末梢部での血流は妨げられ、酸素の供給量は最大30%もダウンするといわれます。これは、エネルギー不足に直結します。
 したがって、ルロウ形成によって、慢性の疲労感、集中力や思考能力の低下、慢性の肩こりや冷え性、血色の悪さや、クマなどができることが考えられます。
 皮膚においては、皮脂腺が皮脂を産生するのも、ケラチノサイトがNMFやセラミド(細胞間脂質)、あるいは、古い角質を剥離するデスモソーム分解酵素を産生するのにも、繊維芽細胞がコラーゲンを産生するのにもエネルギーが必要です。乾燥肌をはじめ、角化異常、たるみ、しわにも結びつきます。
 とりわけ、ルロウ形成と鉄欠乏が重なったとき、どちらもが酸素の供給能力を低下させる要因同士であるために、その症状は深刻になる傾向があります。
 また、リーキーガットが起きて、体内の活性酸素が増加すると、細胞間脂質の過酸化が起きます。そのため、皮脂に過酸化脂質が混入してくると、それは健康な皮脂と違い、粘着性が高く、固形化しやすいために毛包を詰まらせるという事も起こりえます。
 私たちのこれまでの観察では、いわゆるアダルトニキビの多くは、リーキーガットの症状と考えています。なぜなら、食べ過ぎによって悪化し、断食によって改善するからです。
 リーキーガット・シンドロームが起きる原因としては、砂糖やそのほかの精製炭水化物のとりすぎにより、腸内のカンジダ菌が異常増殖した結果である場合や、難消化性のたんぱく質のとりすぎで、腸内に様々な悪玉菌、腐敗菌が増殖した結果、アルコールの取りすぎにより、腸管の浸透性が昂進した結果など様々考えられるようです。
  ここで注目したいのは、難消化性のたんぱく質(特に肉類)と、高GI食品(特に砂糖)は、悪玉菌の増殖を促すのですが、ストレスが、それらへの渇望を引き起こすという因果関係です。悪い要因は、すべからく、お互いに手を取り合っているのです!!
→つづき

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