ヘソを曲げて拒絶、自分が悪い、それは防衛機制?
あなたには、子供時代に欲しいものがすぐに手に入らないと「じゃあ、もういらない!!」と頑なになったことはありませんか?
また、不当に扱われた時に「どうせ私は・・・」といういじけ方をしたことはありませんか?
これらは実は、ストレスや欲求不満、葛藤などを一時的に処理するために行う「防衛機制」と呼ばれる心の働きが現れたものです。
そして、こうしたパターンが癖になって、自分でも気がつかないうちに、大人になっても繰り返し、人生に多大なダメージを与え続けているかもしれません。
本当は望んでいることを頑なに拒絶する「反動形成」
前者のケースは、「反動形成」と呼ばれるパターンです。本当は望んでいることと逆に、それを拒絶する感情を作り出すことで、もともとの欲求を抑圧するというパターンです。
子供の頃の「じゃあ、もういらない!!」というパターンはわかりやすいですが、大人になってもこのパターンを形を変えて繰り返しているケースがなんと多いことかに驚きます。
例えば、相手が期待したように何かをしてくれなかった、という場合に「じゃあもういいよ、あなたに期待した私がバカだった」という捨てゼリフを吐く、というのはその一つの典型です。
ビジネスで、集客活動をやっても思うような反応が得られない時、「どうせ何をやってもムダだ」「人々にはこの価値がわからないのだ」というような考えが浮かんでくることもそうです。
恋人とケンカ別れした後、あるいは離婚した後、「どうせ男(あるいは女)なんて、どいつもこ
いつもろくなもんじゃない、もう男(あるいは女)なんていらない!!」と考えるのもそうです。
ドラマなどで出てきそうなセリフ「私は愛なんて信じない」とか「お金だけは人を裏切らない」とか「そもそも人間が嫌いだ」といった考え方も、もともとは愛や信頼を欲していたのに裏切られて、真逆の考えを作り出したものです。
それにさらに「合理化」を行い、こうした考えが真実であるかのように自分に信じ込ませてゆくわけです。
こうしたクセが大人になっても残っていることで、すぐにあきらめて投げ出す、チャンスを逃す、人間関係を自分から壊す、人と深く関わろうとしないなど人生に大きな制約をもたらします。そのダメージは計り知れません。
「どうせなんでも自分が悪い」ことにしてしまう「自虐」
後者のケースは本来は不当に扱われたことで、相手に対する怒りや不満であったはずの感情を自分に向け、自分が悪いことにしてしまうパターンで、もともとはフロイトが「衝動の自己への向き変え」と呼んだもので、その後の研究者たちによって「自虐」と呼ばれるようになりました。
子供時代に不当に扱われたと感じて、怒りや不満を感じてもそれをストレートに表現すると、もっと事態が悪化することが予測できる場合があります。親や教師を「その反抗的な態度はなんだ!!」と火に油を注ぐようにより怒らせるようなことです。
その場合、「自分が悪い」ことにしてしまうことで、そうした怒りや不満を封じ込めるということをやるわけです。
しかし、大人になってもこうしたパターンが心のクセになっている場合があります。「どうせ私が悪いんでしょ。」といじける場合はまだわかりやすいのですが、このパターンもさらに「合理化を加えて、「私は、〜だから仕方がない」といった思考を作り出して、「私は不当に扱われるべき人間」というような「マイ神話」まで作り出してしまうのです。
このパターンがクセになると、恐ろしく自己肯定感が低くなります。目立つことは避け、積極的に何かやることも避け、とにかく人から批判されるリスクを最小化することばかり考えるようになります。
こちらのパターンもまた人生に対するダメージは計り
知れません。
知って気付こう!!いろいろな「防衛機制」
「防衛機制」という概念を最初に唱えたのは、ジグムント・フロイトでした。フロイトは、「抑圧」、「反動形成」、「退行」、「分離」(隔離)、「打ち消し」、「投影」、「取り入れ」「情動の自己への向き変え」(自虐)の9種類をあげました。その後、娘のアンナ・フロイトが最も建設的なものとして「昇華」を加えました。
その後の研究により、「逃避」、「合理化」、「否認」などが加わり、さらに「行動化」、「身体化」、「代償」、「補償」、「受動攻撃」、「知性化」なども加わりまし
た。
私は、心理療法の現場での体験から、頻度が高く、しかも弊害が多いものを12種類セレクトしました。すでに紹介しました「反動形成」と「自虐」以外のものを紹介します
行動化・・・衝動を受け止めたりコントロールするのではなく短絡的に行動に移してしまうもの。カッときて、暴力や暴言というのはわかりやすい例です。ほか、飲酒、薬物、買い物中毒などもあげられます。
取り入れ・・・他者の考えや感情を自分のものであるかのように取り込むこと。親の期待を自分自身の意志であるかのように思い込むのもこれに当たります。また、人からある人物の悪口を聞かされているうちに自分もその人物が嫌いになるようなものもそうです。こういうことがいじめにつながる場合もあります。
受動攻撃・・・何かしら不満があるときに、仕事や役割をサボったり、わざと手を抜いたり、失敗したり、ひそかな仕返しをしたりといったことです。無意識のうちにやる場合と意識的にやる場合があります。
投影・・・自分自身の思考や感情なのに、それを他者が持っているとみなすことを指します。自分自身が、他人に敵意や嫌悪感を抱いているのを、周囲の人間が自分を嫌い、敵意を持っているとみなすなどが挙げられます。
身体化・・・心の不安や心理社会的ストレスを身体症状の形で訴えることとされています。いわゆる仮面うつ病といって、本当はうつ病なのに精神症状ではなく、身体症状となって現れるケースもあります。
置き換え・・・欲求不満を生じさせている対象を別な対象に移し替えることです。八つ当たりもこれに当たります。また、愚痴を聞いてもらう行為も、本来は当事者に直接不満を伝え、行動の改善なり謝罪なり発言の撤回なりを得られるものならそうしたいところ、それが望めないので、別な人に聞いてもらい、ポジティブな対応を期待するということなので、この「置き換え」と解釈できます。(後で紹介します「操作」の側面もあり得ます。)また。人のせいにするというのもその一つの形態と考えられます。
転移・・・臨床においては、クライアントと治療者間に生じる心理的現象として特別な意味で使われます。しかし、もう少し一般的には、ある感情を似た特徴のある別な人物に向けることを指す。例えば父親への反感を父親に似た特徴のある上司に向けるといったことを指します。
合理化・・・言い訳(いいわけ、making excuses)とも知られ、満たされなかった欲求に対して、理屈付けして自分を納得させることです。例えば合格できなかった学校の批判をし、その学校に入学しなくてよかったのだと考える、というのはわかりやすい事例です。また失敗に対して言い訳を考えるのもその一例です。行動化、取り入れ、投影、反動形成、置き換え、転移などと同時に発生した場合、それらを正当化し思考や行動の修正ができにくくなります。
抑圧・・・欲求不満や不安を無意識に抑え込んで忘れてしまおうとすることです。似ていますが否認(Denial)- は、不安や苦痛を生み出すようなある出来事から目をそらし、認めないことです。 「抑圧」はその出来事を無意識的に追い払うものですが、「否認」は出来事自体が存在しないかのような言動をとります。
操作・・・不安や葛藤を最小化するために過剰に出来事や対象や環境を管理しようとしたり調整したりしようとすることです。やたら仕切ろうとする、細かく干渉するといったことも含まれます。また、わざと問題を作ったり、自分を被害者に見せたりすることで、相手の対応を引き出そうとすることも含まれます。
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アンナ・フロイトが「昇華」と呼んだのは、元々は「社会的に実現不可能(反社会的な)な目標・葛藤や満たす事が出来ない欲求から、別のより高度で社会に認められる目標に目を向け、その実現によって自己実現を図ろうとすること。」という意味でした。
しかしこれは、フロイトが「人間の根本的な欲求は性欲である」と考えたことが前提でした。この前提を外し「人間には色々なレベルの色々な欲求が存在する」という前提に置き換えると、こういう意味になります。
「何らかの欲求を直接満たすことができないことによって生じた欲求不満や葛藤を、より価値や意味のあることを実現する動機に転化すること。」
モノの本には、文学や芸術作品などが引き合いに出されることが多いのですが、それでは普通の人の現実感覚からはかけ離れているので、もっと卑近な例をあげましょう。
例えば、交際中の恋人が長期出張で会えない間に料理のレパートリーを増やす、とか、フラれた後、自分磨きに力を入れる、といったことも「昇華」といって良いと思います。
機能不全家庭に育ち、様々なトラウマで苦しんで生きてきた人が、その体験を人のために生かしたいと考え、自らカウンセラーを目指して勉強するといいうのも典型的な「昇華」と言えます。
人間として生きてゆく以上、すぐに満たせる欲求ばかりでなく、すぐには満たせないか、全く満たせる目処も立たない欲求を持つことでフラストレーションや葛藤を抱えることは避けて通れません。しかし、それを「昇華」することで成長や前進の推進力にできるかどうかで人生は大きく変わります。
わかりやすい例で説明します。ある兄弟は、幼少期に非常に経済的に恵まれない家庭で育ちました。一人の兄弟は、大人になってからも「子供の頃、ああしてもらえなかった、こうしてもらえなかった」とことあるごとに愚痴を言い続けました。
一人の兄弟は、「早く経済的に自立して自分で稼いで好きなものを買えるようになりたい」と考えて、早くからアルバイトを経験し、自己啓発や成功者の伝記のようなものを読むようになりました。
そして、もともとは同じ家庭で育ったこの二人は、その後、収入や幸福度において天と地ほどの違いが生まれました。
しかし、人生に遅すぎるということはありません。まずは自分にどんな「防衛機制」のクセがあるのか自覚し、それにどんなメリット、デメリットがあるのか客観的に見つめ直し、「昇華」に切り替えてゆくことで人生は好転します。
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