人間関係がしんどい「愛着障害」「愛着型」が原因? チェックしましょう
今、注目される親子関係と「愛着型」
精神科医のジョン・ボウルビィ(1907ー1990)らは、乳幼児期の親子関係が精神の発達にどういう影響を与えるかを詳しく解明し、「愛着型」という概念を提唱しました。
これによると、子供時代に十分な愛情、関心、共感が得られた場合は、「安定型」と言われ、脳は健全に発達し情緒が安定した大人になります。
そうでない場合、大人になっても持続的に「生きづらさ」を引き起こします。乳幼児期の「回避型」は、大人では「愛着軽視型」に移行すると言われ、人との親密な関係を避ける傾向を持つとされています。「アンビバレンツ型」は、大人では「不安型」に移行し、慢性的に不安レベルが高く、人のネガティブな態度に過敏な傾向を持つとされています。「アンビバレンツ型」と「回避型」の両方の傾向を併せ持つ「無秩序型」は、大人になると「未解決囚われ型」に移行し、情緒が安定しにくく、うつや不安障害のハイリスク群と言われます。ただし、その一致は7割くらいと言われます。
その後脳の研究が進み、脳機能の発達と結びつけた研究が進みました。まず「不安型」は、情動を作り出す脳の器官である扁桃体の活動が過剰な傾向があり、不安や恐怖を感じやすい傾向があり、愛情ホルモンとか信頼ホルモンとも呼ばれるオキシトシンの放出が抑制される傾向があります。また、「愛着軽視型」では、報酬に反応したり、期待感や意欲の発生源である脳の器官、線条体の働きや右脳の働きが抑制され、オキシトシン受容体が減少していることがわかりました。
全く別な切り口から研究を進めた結果、胎児期から出生時、3歳以前の幼少期に受けたストレスが原因で、大人になっても慢性的に扁桃体が過剰活動をするケースが存在し、医学分野の研究では、「扁桃体過活動」と呼ばれていることに行きつき、「過剰警戒症候群」と名付けました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。これは結果的に起きていることは愛着型における「不安型」と同様です。
また、愛着型における「愛着軽視型」というのは、認知心理学で言う「情緒的剥奪」と結果的に同様です。これは、生い立ち過程で愛情、共感、援助が不足し、もはやそれらを期待しなくなることを指します。人と親密になれず、一人で問題を抱える傾向を持ちます。それだけでなく、人生に限界や制約を設けることになりますが、この問題について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
こうなると、乳幼児期、特に生後半年から1年半くらいの養育者との関係で愛着型が決まるとする従来の理論だけでは理解も対応もできないことになります。実際に現場では、既存の愛着理論では辻褄が合わないケースも多く遭遇します。そこで私は、原因がなんであれ結果的に起きていることが扁桃体過活動であれば「過剰警戒型」、情緒的剥奪であれば「愛着回避型」、その両方の特徴を併せ持つ場合は「混合型」と呼ぶことにしたのです。
愛情不足、共感不足で生じる「愛着回避型」
愛着理論によると子供時代に愛情、関心、共感が乏しかった場合、「愛されたい」「理解されたい」という欲求を抑圧し、回避型または愛着軽視型と呼ばれるタイプになるとされています。
このようなタイプの場合、冷淡な親や共感能力の乏しい親との関係、または育児放棄のパターンが原因となります。
このタイプの人は、右脳や線条体という器官の機能が抑制されるため、社会的報酬に対する反応が弱くなると言われています。例えば微笑みかけられたり親切にされたりした場合でも、喜びの感情が湧きにくくなるため、人への共感や情緒の表出が乏しくなる傾向があります。子供時代の記憶は断片的で、活き活きとした感情の記憶があまりないことが多いとされています。
このタイプは「反応性愛着障害」と呼ばれることもありますが、先にも触れたように、私は「愛着回避型」または「愛着回避症候群」と呼びたいと考えています。恋愛に関しては「恋愛回避症候群」とも呼ばれることがあります。このようなタイプの人は、人間関係が親密になりにくく、相手の気持ちをつかみにくい傾向があります。また、喜びの感情が湧きにくいため、無表情やぶっきらぼうな印象を与えることがあるとされています。
このパターンは、人口の約20%を占めると言われてきました。しかし近年、大学生を対象にした調査では、50%にも達したという報告もあります。
情緒不安定な親のもとで生じる過剰警戒型
愛着理論によると親が愛情や共感、理解を示すように見える時もあるものの、不安定で一貫性がなく、突然ヒステリックになるような場合、「アンビバレント型」または「不安型」と呼ばれる愛着型になると言われます。
この状態では、扁桃体の過剰な活動によって、相手のちょっとした否定的な態度に過敏に反応し、不安レベルが高く、自信が持てない傾向があります。
私が独自にさまざまな研究事例を検討した結果、
この状態は「扁桃体過活動」と呼ばれるものであり、愛着理論で言われる、乳幼児期における養育者の精神的不安定だけではなく、例えば、胎児期の母親のストレス、未熟児出産や難産など出生時の問題、偶発的な事故や病気、世代間伝搬などによっても生じ得ることがわかっています。
世代間伝搬というのは、なんらかのトラウマの痕跡が世代間で継承されることを指しており、動物実験でも確認されていることです。だから、例えば、祖父母が空襲や戦場を体験している場合、その影響を受ける可能性もあるのです。
このパターンは、人口の約10〜15%を占めると言います。
※この問題が実際に改善した方の体験談、感想はこちらをご覧ください。
過剰警戒型につきまとう過剰忖度という問題
過剰警戒型に当てはまり、過度に緊張したり、心配性な人たちは、他人の微妙な態度や否定的な反応に対して非常に敏感に反応することがあります。それによって、常に周りの人たちに過剰に気を使う場合があります。
また、自分が犠牲になってでも他人のために尽くすことが当たり前に無xっているケースもあります。いわゆる共依存にも陥りやすいものです。このような傾向が過剰に強い場合を私は、「過剰忖度症候群」と呼んでいます。
恋愛においては「だめんず・ウォーカー」として現れることがあります。職場でも、人の世話をすることに多くの時間を費やす傾向があり、愚痴や不平不満の聞き役になってしまうことがあります。
また親元を離れられず、まるで親の介護要員ででもあるようなケースもあり、私は「母の呪縛」と呼んでいるケースもあります。
より深刻度の高い「混合型」「無秩序型」
愛着理論では、親が精神疾患などを抱え、予測外の異常な反応をする場合、「不安型」と「回避型」の特徴を併せ持つ「無秩序型」と呼ばれる愛着型があります。この愛着型の人は、大人では「未解決囚われ型」と呼ばれてきましたが、情緒不安定な傾向を持ち、人間関係を築くことが難しく、情動のコントロールが難しいと言われています。
ダニエル・J・シーゲル博士によれば、彼らは単に両方の特徴を持っているだけでなく、「潜在記憶」と呼ばれる異常な記憶を持っている場合が多いと言われています。このような状態では、フラッシュバックや解離の問題が起こることがあります。「無秩序型」はうつ病、パニック障害、社会不安障害、全般性不安障害、摂食障害、アルコールや薬物の依存症などを発症するハイリスク群であり、引きこもりになることもあります。
ただ、これに当たるケースでも、軽度の場合もありますし、一見それとわからないようなケースもあります。「無秩序型」という言葉がしっくりこないケースも多いので、私は、「混合型」と表現しています。
というのは、扁桃体過活動の原因と情緒的剥奪の問題が重なっているのですが、それぞれが別の原因で生じたケースもあるからです。
これに該当する人は、安定した人間関係を作るのが難しく生きづらさを抱える傾向があるのですが、生い立ち過程で親との関係に問題があるケースでも、友人や教師に恵まれたケースでは比較的軽く、生い立ち過程で家庭内だけでなく、学校や職場でも虐待的な扱いを受け、信頼できる人がいないようなケースは重度の問題を抱える傾向があります。
「無秩序型」または「混合型」は人口の約10%が該当するといいます。
愛着の問題でより正確で確実なサポートを確立
もしあなたが、自分の問題は愛着の問題ではないか? というところからこのページに辿り着いたとしたら、誰に相談したらいいかわからない状態にあるか、あるいはすでに、いろいろなカウンセリングや精神科、心療内科の治療を受けたものの埒が開かなかったという体験をお持ちではないでしょうか? 愛着型の問題は、心理学だけでなく、大脳生理学、脳の発達理論などを総合しないと理解できません。それらをカバーし、改善する方法論を持っている医師、カウンセラーはおそらく極めて稀です。
私は、心理学と医学の数多くの研究論文、特殊な測定器を使った独自研究などから、問題を正確に分析してメカニズムを説明し、改善する方法論を確立してきました。このことには、20数年の蓄積があります。
心や脳の働きは、物理的なものを除けば、「学習」の結果で決まります。しかし、「学習」にはいくつものレベルが存在します。まず、認知学習があり、これは前頭葉を中心にした高次脳機能を通じて行われます。これよりは、短絡的なものとしてメタモデルがあります。このレベルまでは、認知行動療法やNLP(神経言語プログラミング)などで対応し、再学習することで改善は可能です。
問題は、より原始的な脳のシステムによって行われた学習は、それらの方法では対処できないことなのです。愛着の問題は、この原始的な脳のシステムで起こることです。しかし、研究の結果、このレベルに楽に安全にスピーディーに働きかける方法論を開発しました。すでに数多くの方が、この問題を克服し、新しい人生を体験されています。
セッション数回での改善と数ヶ月、数年単位での改善
私は、20年以上セラピストとして、従来の心理療法の限界を乗り越えるために長年研究と開発に励んできました。従来の心理療法は時間がかかりすぎたり、効果が不確実であったり、長年抱えてきた性格などの問題を解決できないという限界がありました。
しかし、私の独自研究により、たとえ何年もの問題を抱えていた場合でも、わずか数回のセッションで劇的な変化が起こることが分かりました。しかし、これまで重要視してきた「早期改善」の考え方も見直しつつあります。
私の経験によれば、数回のセッションで一定の改善が見られると同時に、数ヶ月や数年単位でより大きな変化が起こることもあるということがわかってきました。このような変化は、スキーマ(思考の枠組み)の書き換えやエピソード記憶の再構成などの短期的な変化だけではなく、脳自体の機能改善による長期的な変化と解釈できます。
「愛着型」については、脳の発達に影響を与えるため、修復には数ヶ月から数年かかることもあります。ですから、過去にセッションを受けたことがある方や、潜在意識の書き換えは試したことがあるという方も、まだまだ大きな変化が待っていることを知っていただきたいと思います。
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