潜在意識のより深い秘密・インナーベビー(イニシャルスキーマ)とは何か?
イニシャル・スキーマとは何か
イニシャルスキーマのイニシャルとは、初期設定の、という意味であり、人間が生来的に持っているスキーマという意味があります。
イニシャル・スキーマを理解するためには、人間の哺乳動物としての特殊性を理解する必要があります。人間以外の哺乳動物、例えば馬などは、産まれてくると間もなく立ち上がり、普通に歩いたり走ったりし始めます。それに対して、人間の赤ちゃんは、全く未熟で、自分の世話を何もできない状態で生まれてきます。理由は、直立歩行することで産道が狭くなった上に、類人猿に比べて脳の容積が3倍にもなり、十分に成長してからでは、産道を通れなくなってしまったからです。
そのため他の動物よりもまだ未熟な状態で生まれてくるのですが、スイスの生物学者ルドルフ・ポルトマンは、このことを指して生理的早産と呼びました。
しかも、人間は地上において決して強い生き物ではありませんでした。食べ物が豊富なジャングルで生息していたときはいざしらず、地球上に散らばり、より生存が困難な草原地帯や寒冷地にまで生息圏を広げる過程での生存率は非常に低く、多産多死が普通でした。
このようなプロセスを生き延びるために、養育者に対して自分のニーズを満たすよう、強くアピールすることが赤ん坊の時期には必要でした。時と場合によっては、兄弟姉妹との間でさえ、生存競争に勝ち残る必要があったのです。
そこで、養育者に対して何よりも優先して自分のニーズを満たしてくれるようにアピールするようなスキーマを獲得していったと考えられるのです。また、全く未熟な状態で生まれてきて、その後急速に発達する必要もあったので、必死に成長するように仕向けるスキーマも獲得しました。
これが、イニシャル・スキーマの由来です。その内容は、たくさん生まれてきてたくさん死んでゆくような条件の中で、赤ん坊の時期を生き抜くため、ある意味、自己中心的な内容に設定されています。
人間の赤ちゃんは、殆ど100%生存を養育者に依存する様な状態でこの世に生を受けますので、自分に必要な事を常に養育者に要求します。その主な手段が泣くことです。
それも、お腹が空いた、どこか具合が悪い、おしめを変える必要があるなどのニーズに早く気づいて対応してもらうために、しばしば激しく泣くのですが、実はそれが生存に必要だったといえるのです。
イニシャル・スキーマと早期不適応的スキーマの関係
こうしたスキーマを基準にして、その後「早期不適応的スキーマ」が形成される場合があります。例えば、泣いていることに対して、養育者の対応が遅れがちな状況を想定してみましょう。「私は常に保護されるべきだ」という基準からすると、「ほったらかしにされた」という事になり、見捨てられ・不安定スキーマが形成されるかもしれません。そして、養育者にすがりつく、あるいは、機嫌を取るなどの新しい反応パターンを作り出すかも知れません。
また、「私は常に喜ばれるべきだ」という基準からすると、養育者がイライラしたり、面倒くさそうな態度をとったりすることで、「私は、厄介者」「私は迷惑な存在」など「欠陥/恥スキーマ」が形成され、我慢や遠慮といった新しいパターンでの反応を作り出すかも知れません。
~べきだ、という思考パターンからすると、そうでない場合には、不当に扱われていると感じて怒りか、あるいはパニック、悲しむという反応を引き起こします。
イニシャル・スキーマの類型化
その後の研究により、イニシャル・スキーマは、8つの類型に分類できることが分かりました。そして類型ごとに「要求」「保護」「独占」「祝福」「理解」「優越」「万能」「承認」タイトルが割り与えられました。
これらのうち「要求」「保護」「独占」「祝福」「理解」の5つは生まれてきた時点で備わっており、earlyの略でEグループと呼びます「優越」「万能」「承認」の3つは2、3歳ごろになって発現し、急速な成長を促すもので、laterの略でLグループと呼びます。
要求のイニシャルスキーマとは、例えば「必要な時、すぐに対応してもらえるべきだ」と言ったもので、思い通りにならない、待たされるなどの状況でイライラする原因になります。
保護のイニシャルスキーマは、例えば「私は常に守ってもらえるべきだ」と言ったもので私は見捨てられる」「私はほったらかしにされる」などの見捨てられ/不安定スキーマとセットで残っている場合が多いものです。
独占のイニシャルスキーマは「愛情は独り占めできるばきだ」というもので、大人になっても残っている場合、「私は相手にとって一番であるべきだ」と変形している場合がほとんどで、重要他者にとって最も重要視されるポジションを取りたがりますが嫉妬の原因にもなります。
祝福のイニシャルスキーマは、例えば「私はみんなに喜ばれるべきだ」というもので、大人になって残っている場合、「私はみんなを喜ばせるべきだ」というシフト・イニシャルスキーマに変化して残っている場合が多いものです。
理解のイニシャルスキーマは、例えば「私の気持ちや感情は常に理解されるべきだ」というもので、「私の気持ちや感情は無視される」などの情緒的剥奪スキーマとともに残っている場合が多いものです。
優越のイニシャルスキーマは、例えば「私は常に優位であるべきだ」「私は常に優越すべきだ」というもので、負けず嫌いの原因となり、「私は馬鹿にされる」「私は見下される」などの不信/虐待スキーマとともに残ってっる場合が多いものです。
万能のイニシャルスキーマとは、「私はなんでもできるべきだ」というもので、やたら色々なスキルに手を出しては放り投げる癖のある人は、このイニシャルスキーマが残っていないかチェックが必要です。
承認のイニシャルスキーマは、例えば「私は常に認められるべきだ」「私がやることは認められるべきだ」というようなもので、人からの評価に囚われすぎる原因になり、また「私は常に否定される」「私がやることは否定される」などの不信/虐待スキーマとともに残っている場合が多いものです。
すでに触れましたが、、イニシャル・スキーマのすべてが、初期設定そのままで残っているわけではなくて、より適応的に変形しながら残っているケースがあります。このようなものを私は、シフト・イニシャル・スキーマと名づけました。
典型的なイニシャル・スキーマの一つに「私は(ただいるだけで)、みんなに喜ばれるべきだ」というのがあります。イニシャルスキーマは、普段は抑圧されていて、親しい相手との関係で出てくる傾向があります。大人になっても、このままの形だと、自分と一緒にいるときに相手が不機嫌だと、それだけで傷ついたり、腹立たしくなったりして「私と一緒にいるのに、なんだってそんなに不機嫌なのよ!!」と言いたい気持ちになるかもしれません。
そして、原型とは異なる形で残っているケースが多いことにも気が付きました。それは、
「私はみんなを喜ばせるべきだ」といったものです。
このようなものがシフト・イニシャル・スキーマです。このようなスキーマがある場合、みんな
に気を使ったり、みんなに好かれようとしたりしますので、プラスに働く面も大いにあります。けれども、相手が喜んでくれなかったり、不機嫌だったり、誰か一人でも自分を嫌っている人がいるというだけで、苦痛を感じることになります。また、人を喜ばせるために無理をすることにもなります。
みんなを喜ばせたい、みんなに好かれたいという欲求を持っている事自体は問題はなく、むしろいいことです。問題なのは、例によって「~べきだ」という思考パターンであることです。
これらをキャンセルして、「それぞれの人の選択を尊重する」ということのダウンロードなどに置き換えると楽になり、無理がなく、自然体で自分も楽しみながら人を喜ばせることができるようになります。
イニシャル・スキーマの法則
イニシャル・スキーマは赤ちゃん期を生きるため、および幼少期に急雨撃な成長を促すためにあるもので、成長とともに必要なくなります。しかし、それらの要求が満たされないまま抑圧されることで、密かに残ったまま大人になるケースがあります。
例えば、ごく幼い時から、放置され気味で、いざという時に守ってもらえるという安心感が得られなかったとします。すると「私は見捨てられる」とか「私はほったらかしにされる」というようなスキーマが形成される一方で「私は常に保護されるべきだ」などのイニシャルスキーマが抑圧されながら残ります。
大人になってもイニシャルスキーマが残っている場合、遠い間柄の相手に対して出ることはどちらかと言えば稀ですが、配偶者など近しい相手に対しては出やすいものです。この事例では例えば「あの時私を守ってくれなかった」というようなことが恨みになるのです。こうしたことが、瑣末なことで夫婦喧嘩が起こる原因にもなります。
また、自分が抑圧しているのと同様なイニシャルスキーマを人が露わにするのを見ると、怒りや苛立ちを覚えます。例えばこの場合だと「かまってちゃん」な人を見るとイラつくかもしれません。フロイトは、自分自身が抑圧している要素を他者の中に見たときに激しい嫌悪感や怒りを感じるという現象を「シャドーの投影」と呼びました。私の見解では、シャドーの正体は、抑圧されたイニシャルスキーマであると見ています。
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