コンプレックスとは何か? どう解消するか?
コンプレックスとは何か?
コンプレックスとは、複合体という意味で、フロイトやユング、アドラーなどどちらかと言えば古典的な心理学で使い古されてきた概念です。
日本では、アドラーのパーソナル心理学とともに、「劣等コンプレックス」という意味で知られるようになりました。
しかし、認知心理学や脳科学の新しい知見に基づいて再定義が必要だという認識に到りました。
3種類ある人間の記憶
人間の記憶には、意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶の3種類があります。
この間主要に扱ってきた「スキーマ」は、意味記憶に属しています。
例えば、「私は無価値だ」という信念は、意味記憶として保存されていて、それはエピソード記憶の中の、それを裏付ける体験とリンクされ、さらに卑屈な態度をとる、あるいは自分のダメ出しをするというパターンの手続き記憶がリンクされています。
このように、意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶の三つにまたがるネットワーク、これこそが文字通りコンプレックス=複合体の正体であるという定義付けです。
そしてそれを解消するためには、意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶のどこを入り口にしても働きかけができるということです。
認知療法やシータヒーリングは、意味記憶に
タイムラインワークやヒプノセラピーは、エピソード記憶に
行動療法や多くの自己啓発法は、手続き記憶に
このように考えると、この世にあるさまざまな技法の位置づけや、なぜ効果があるのか説明がついてきます。
LibertyWingsプログラムは、トランス・コンバージョンで意味記憶に働きかけるのが主要な方法でしたが、光のタイムライン・ワークでエピソード記憶に働きかけることができます。しかし、従来のプログラムは、手続き記憶へのアプローチがあまり含まれてはいませんでした。一部、「エジソン・ワーク」などのアプローチはありますが、まだ開発の余地があります。
古い考え方を意識的に中断する、新しい考え方や行動を意識的にクセ付けする、こうしたことに日常的に取り組む課題をクライアントに与えることでより効果的なものになることは間違いありません。
脳科学では、ヘッブの法則というものが知られています。
よく使うニューロンのシナプスは伝導性がよくなり、使わないニューロンのシナプスは伝導性が悪くなるというものです。
つまり、スキーマを書き替えても、スキーマを前提として思考をくり返してきた経路はやはり働きやすいのです。これが習慣の力の正体でしょう。
だから新しい思考と行動の習慣を育てて行くということも大切なのです。
もっとも効果的な方法、考え方は?
世の中に数多くある、願望実現法などでも効果的な場合も多く、潜在意識のレベルまで変化が及んでいると思われる事例も多々あります。
意識的思考は、手続き記憶に働きかけると思われますが、粘り強く取り組めばこの側面からも潜在意識に働きかけることができることを示していると思われます。
しかし、それだけで考え方を変えて新しい考え方を定着させるのは、相当な努力と時間を要すると思われます。
そこで、三つの記憶の全領域から働きかけるという体系を用いれば、最高の効率が達成できるはずです。
LibertyWingsプログラムも万能ではありませんでした。
中には効果がでない人もいました。効果が出ないのは、本人が考え方を全く変えようとしないケースです。
特定の考え方以外の柔軟性に欠ける場合、効果が出るのに時間がかかる場合があります。
こうしたケースでも、本人が取り組む必要がある課題を明示することで変化が起こりやすくなる、また自分の責任を自覚しやすくなると思われます。
当初、スキーマ=意味記憶の修正を中心に発展してきたLibertyWingsプログラムですが、ついに心の全領域からサポートする体系としてさらなる発展を遂げつつあるのです。
特に近年急速に発達してきた「ポジティブ心理学」の知見は大いに役立つものと思われます。
いずれにしても、新しい思考や行動の習慣を身につけるためには最終的に、新しい手続き記憶を形成して行く必要があります。
そのためには、意志による学習と訓練も大きな意味を持つのです。