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V・現代医学の盲点と完治への道

キーは、食事と運動、しかし盲点が・・・

 現在の医学常識によれば、糖尿病を改善する鍵は、食事と運動といわれています。食事は、カロリー制限をし、低脂肪、減塩が基本といわれています。カロリー制限は、血糖値をできるだけ上げないことと、肥満を防ぐ意味があります。低脂肪の意味は、脂肪細胞が、脂肪で満たされてしまうと、糖分の取り込みをしなくなるから、間接的に血糖値を悪化させるからだといいます。また、糖尿病患者は、ナトリウムを体内に溜め込みやすくなり、高血圧を招くといいます。
 運動をすることも、大きなポイントになります。 先に骨格筋や脂肪細胞で糖分の取り込みを行っているGLUT4の働きは、インスリンに依存していると述べました。しかし、骨格筋では、運動をしているときに、GLUT4が、インスリンの働きがなくとも、細胞膜表面に移動し、糖分を取り込むようになります。これをトランスロケーションといいます。また、運動を継続すると、それは、骨格筋自身が、エネルギーを必要とする状況を作るので、GLUT4や、インスリン・レセプターの機能を回復させることができます。
 ここまでの記事を読まれた方は、糖尿病のそもそもの原因は、血糖値の急速な上昇が繰り返された結果、インスリン抵抗性が起こり、ひとたび血糖値が高過ぎる状態が続くようになると、糖毒性によってインスリンの働きがさらに妨げられたり、脳の糖分の取り込みが低下し、脳が誤った指令を出すようになることから悪循環がおこってゆくということを理解されたと思います。
 そうであれば、血糖値をできるだけ正常に近く、安定して下げておくことができれば、GLUTの働きも回復してだんだんに回復するはずではないか、と思われるでしょう。基本は、そのとおりです。インスリン抵抗性という問題は、いわば、体の過適応ともいえることなので、可逆的な変化です。
 にもかかわらず、現代医学の中では、悲観的な見解が多いのはなぜでしょう? ある糖尿病専門の医学サイトでは、「糖尿病は、ひとたびかかれば完全には治せませんが、早期治療によって合併症を防ぐことはできます」といった内容のことが書かれていました。また、糖尿病の患者さんが、医師から提示されたのは、非常に厳しい食事制限に、お酒も一滴も飲めないという内容で、「一生、これを守らなければ、やがて足を切断したりして、早死にをする」と脅されたといった話も聞きます。
 どうして、糖尿病は、そんなに現代医学で治りにくい病気なのでしょうか?

糖尿病は欠乏症だった!?

 その昔、ヨーロッパでは、膨大な数の船乗りたちが壊血病で命を落としました。例えば、インド航路を発見したヴァスコ・ダ・ガマは、船員の三分の二をこの病気で失い、クリミア戦争のとき、フランス海軍の死者は、戦死よりも壊血病による数が多かったといいます。壊血病が、単なるビタミンC欠乏症であると発見される前の話です。
 その昔、日本では、数十万人が、脚気によって命を失いました。特に明治時代になってから、数万人に及ぶ軍人が命を失いました。後に脚気は、ビタミンB1欠乏症として知られるようになりますが、それよりはるか以前に、海軍の軍医が、白米のご飯に、麦を混ぜるだけでそれを防げることを発見していました。にもかかわらず、陸軍軍医のトップだった森鴎外や当時の東大医学部は、伝染病説に固執し、被害を拡大したのです。
 では、現代においては、こういう問題は、本当に過去のものになったといえるのでしょうか?
 今、糖尿病をめぐっても、世界的に論争があります。それは、クロム、亜鉛などのトレース(微量)ミネラルの不足が、糖尿病の一因であり、それらを補給することで改善が得られるという説をめぐるものです。そして、このことには、世界中で数多くの証拠が提示されています。
 1997年にDiabetes(アメリカ)という糖尿病研究のトップクラスの専門誌に、『クロムのサプリメントは2型糖尿病に有効』とする論文が載りました。 この研究はアメリカ農務省が補助金を出して、わざわざ中国へ行って調べたのです。なぜ中国かというと、アメリカを始めとして先進諸国では多くの糖尿病者がビタミンやミネラルのサプリメントを既にとっていたからです。
   ボストンのジョスリン糖尿病センターでは糖尿病者にいろいろなクロムのサプリメントを与えましたが効果はありませんでした。 そこで出した結論は『アメリカ人にはクロムの欠乏はない』というものです。
 サプリメントが普及したアメリカで、それでも糖尿病にかかった患者さんの場合には、クロムの不足は関係がなく、それ以上多くとっても意味がないのでしょう。では、日本人の場合ではどうなのでしょうか?
  糖尿病に対しては、クロムのほかに亜鉛、セレニウム、バナジウムなども効果が報告されています。
では、現在分かっている、栄養素と糖尿病の関係について詳しく述べてゆこうと思います。

キーワード、それはGTF(クロム)と亜鉛

 クロムと聞くと、有害な汚染物質と思うかもしれません。実は、クロムには、6価と3価の形があって、6価クロムは、有害ですが、三価クロムは、必須栄養素です。
 先に、脂肪細胞が分泌するアディポネクチンというものが、インスリンの働きを助けるということを述べましたが、もうひとつ、インスリンと、インスリン・レセプターの結合を仲介してその働きを助ける要素として、GTF(Glucose Tolerance Factor)というものが知られています。GTFは、クロムと、ナイアシン(ビタミンB3)とアミノ酸が結合して体内合成されます。当然、クロムが欠乏すれば、GTFの体内合成も低下します。
 もうひとつ、亜鉛と糖尿病の関係です。そもそも、亜鉛は、インスリンの構成要素であると述べれば十分でしょう。糖尿病が発症するまでに、インスリン抵抗性が起こり、それでもバランスをとるために、インスリンが大量に分泌されている状態(=高インスリン血症)という状態を経由すると述べました。そのときに、亜鉛は、激しく消耗されてしまうのです。ひとつの可能性として、亜鉛の備蓄が底をつき、もう大量のインスリンを作ることができなくなったときに、糖尿病が発症するのかもしれません。問題は、クロムや亜鉛の不足、欠乏ということが現代人に本当に起きているのかと言うことです。
 近年の国民健康・栄養調査でも、鉄、亜鉛、銅に関して所要摂取量を下回っていることが明らかにされています。クロムに関しては、調査の対象にさえなりませんでした。厚生労働省が定めた所要摂取量は、男性35μg、女性30μgと必須栄養素として認識はされています。しかし、これもアメリカFDAのRDA(摂取勧告量)が、成人で120μgという数値と随分開きがあります。
 亜鉛やクロムというのは、もともと、食品を精製する過程で大部分失われる栄養素です。全粒穀物、豆類、ナッツ、海藻類、イワシなどの魚、アサリ、ハマグリ、カキなどの魚介類には比較的豊富ですが、こうしたものを殆ど口にしない人も少なくないでしょう。しかも、精製した炭水化物食品というのは、急激に血糖値を引き上げる(グリセミック・インデックスが高い)性質を持ちます。つまり、ファーストフード、ジャンクフード、甘いもの、スナック菓子、清涼飲料、ビールや日本酒などが摂取カロリーに占める割合が高いならば、ミネラル不足と急激な血糖値の上昇によってインスリン抵抗性を引き起こす、ダブルパンチを受けることになるのです。
 しかも、糖尿病を発症すると、腎臓の再吸収能力が低下することで、亜鉛やクロムなどのミネラルが、尿に多く捨てられるようになるのでますます不足させやすいというのです。まさに悪循環です。
 糖尿病にかかる過程や原因、体質は千差万別と思われますので、すべてのケースに当てはまると断定するつもりはありませんが、少なくとも一部は、クロムや亜鉛を補給することが重要なポイントであるかもしれません。実際に、こうしたものを補給することで劇的に改善したケースがあります。

グリセミック・インデックスこそ重要

  ここまで読まれた方でカンのいい方は、糖尿病を防いだり、改善するために、ひとつの重要なポイントは、グリセミック・インデックスを低く抑えることではないか? と気づかれたかもしれません。確かに、総カロリーの制限も大切な要素でしょう。そもそもなぜ過食におちいるのかという大きな理由が、急激な血糖値の上昇の後で起こる急激な血糖値の降下にあるのです。実験してみれば分かることです。昼食を白いパンのサンドウィッチやハンバーガーと、砂糖たっぷりのカフェオレやコーラで済ました場合、たぶん夕方くらいには、集中力の低下や、イライラが起きて、大概、間食なしでは、いられないと思います。また、夕食は、脂っこい、カロリーの多い食事がとりたくなることでしょう。
  玄米と豆料理とか、全粒分パスタにトマトソース、それに繊維質の多い野菜の組み合わせといった構成だったら、さほど、そういうことは起こらないと思います。グリセミック・インデックスの低い食事、つまり血糖値が安定する食事では過食は起こりにくいのです。
 また、インスリン抵抗性が起こる最大の理由は、インスリンの過剰分泌が繰り返されることなのです。確かに、脂肪細胞に脂肪がいっぱい詰まってくる、つまり肥満になることで、脂肪細胞のブドウ糖の取り込み能力が低下するというのも一因ですが、インスリン抵抗性は、脂肪細胞だけでなく、骨格筋を筆頭に全身の細胞で起こることなのです。肥満だけが原因ではありません。
 ただし、グリセミック・インデックスの低い食事といっても、肉やチーズのように炭水化物を殆ど含まないものばかりとることでを勧めている訳ではありません。そういう食事は、カロリー・オーバーを簡単に招き、しかも、脳、神経系が必要とする炭水化物が得られません。たんぱく質中心で、炭水化物を取らない、アトキンス法などのダイエットでは、死者さえも少なからず発生しているのです。
 あくまで炭水化物を中心にして、しかもグリセミック・インデックスが低い食事をデザインすることが肝心で、そのためのポイントは、4点あります。

@主食である穀物を、未精製かできるだけそれに近づける。玄米、全粒パン、ライ麦パン、オートミール、全粒粉パスタなど。  白米を食べる場合でも、雑穀、キヌア、アマランサス、蕎麦の実などを一緒に炊き込む。

A豆類を食べる。豆類は、炭水化物の消化と吸収をゆっくりにさせる。大豆、大豆製品、レンズマメ、キドニービーンズ、ガル  バンゾー、白花豆、えんどう豆、絹さや、もやしなど。ご飯を炊くときに豆類を混ぜ込む方法もよい。

B食物繊維の多い野菜を食べる。食物繊維もまた、炭水化物の吸収をゆっくりにさせます。ブロッコリー、カリフラワー、アスパラガス、レンコン、ゴボウ、海藻類、キノコ類など。イモ類では、ジャガイモは、GIが高いが、サツマイモは低い。

C酸も、炭水化物の消化と吸収をゆっくりにさせる。酢の物、トマト煮など。ただし、ケチャップは、重量の約30%が砂糖なので、この目的には不向きです。トマトピューレーならOKです。しかも、カロリーもケチャップの約三分の一です。

一般的なガイドラインでは、脂肪も極力控えるとなっていますが、それは、脂肪細胞が脂肪で満たされると、糖の取り込みをしなくなるというのが理由ですが、要は、総カロリーの過剰を避けるということで、オリーブオイルやごま油などを適量使うことは問題がなく、ある程度糖分の吸収速度をゆっくりにさせる側面もあります。
 塩分は、ただ控えるというのではなく、スープストックやだしをしっかりとり、素材の味を深く味わうことで、おのずと少なくてすみます。糖尿病への取り組みは、ある程度長期戦になりますので、食べることを楽しめて、無理のない内容が必要でしょう。詳しくは、「癒しの食卓・スリムアップも若返りも食しだい」をお読みください。

ビタミンB群の重要性

 さらに、キーとなるのが、ビタミンB群の働きです。炭水化物、脂肪、たんぱく質といういわゆる3大栄養素は、カロリーとして、エネルギーに変換されます。細胞の中にあるミトコンドリアという小器官の中で、クレブス回路と呼ばれる代謝系によってそれは行われています。その代謝に、多くのビタミンB群の栄養素が必須なのです。
  しかも、糖尿病患者の血液中に、これらは低い濃度でしか存在しない傾向があると報告されています。それは、糖尿病にかかりやすい食事内容というのが、ビタミンB群を不足させやすい食事でもあることと、糖尿病患者においては、それらの必要量が増加する(消耗が激しい)という二つの理由が考えられます。
 ナイアシン(B3)は、3大栄養素のすべて、チアミン(B1)は、炭水化物、リボフラビン(B2)は、脂肪、ピリドキシン(B6)は、たんぱく質の代謝にとって必要不可欠です。
特に、ナイアシン(B3)は、先に紹介しましたGTFの構成要素そのものです。ナイアシンは、単独で摂取しても、糖尿病に有効とする研究報告もあります。
 また、ビタミンB1、B6、イノシトールについても同様な研究報告があります。さらに、シアノコバラミン(B12)は、糖尿病の神経障害からの回復に有効とされています。B12に関しては、現代医学でも有効性が認められており、特に神経組織に取り込まれやすいように分子構造を装飾したビタミンB12は、メチコバールの名で医薬品となっています。
 ただ、ビタミンB群は、チームで働く傾向があるので、単独でとるよりも、グループで摂取したほうがよいとも言われます。
 糖尿病そのものに対してもそうですが、様々な合併症、神経障害、ED(勃起不全)、動脈硬化などを防いだり改善するにも、栄養素が役立っています。 確実に毎日、効果が出るだけの必要な量の栄養素を摂取するためには、サプリメントが役に立ちます。
  では、実際に、食事の改善と運動に加えて、どのようなサプリメントが役に立つのか、どのような方法が減量に効果的なのか、また合併症を防いだり、改善するためにどのような栄養素が役に立つのか、そのほか役に立つ方法論について、述べてゆきたいと思います。

つづく

T・深刻です!しかし治すことは可能です!
U・糖尿病は、こうして起こり、そして進行する
V・現代医学の盲点と完治への道
W・希望の光・栄養療法
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