うつ(抑うつ、気分障害)は、いまやありふれた問題となっています。 しかも、自分でもそのことに気がつかず、あるいは、うすうす気がついていても、心の問題で病院に行き、『病人』として扱われて薬を処方されることに抵抗を覚え、誰にも相談できないでいる人がなんと多いことでしょう。
また、病院で投薬を受けて症状は軽くなっても、本質的な 問題は何も解決せず、すっきりしないでいる人も多くいます。
こころと体の自然治癒力に目を向けて、納得の行く向き合い方を探してみませんか?
あなたにはこんなことありませんか?
あまりに慢性化し、特別なことと思えないようなことが、うつの前段状態だったりします。例えば、休日になるとぐったりして昼まで起きられない、些細なことでいらいらしたり、落ち込んだりする、最近感動したり、心から意欲がわくということがなくなった、将来がいつも不安である、食欲がないか、逆にドカ食いをしてしまうなどです。これらは、すでに心が本来的にはたらく前提となる生理状態に乱れが生じているのです。
第1部 ストレスと生理機能
ストレスに人はどう反応するか?
人がストレスを受けると、まず交感神経が緊張し、副腎皮質からアドレナリンがでます。たとえば、かっときた時、ヒヤッとした時などです。アドレナリンはカンフル剤のような働きをしますが、つよい毒性があり、ながい時間たくさん使い続けることは出来ません。
そこで、ながい間ストレスがくわわると、こんどは副腎皮質からコルチゾール(糖質コルチコイド)が分泌されてきます。このホルモンは、静かに燃え続けるようにはたらき、血糖値と代謝をあげさせ、免疫の活動をおさえこみ、炎症や痛みをおさえます。ですから、おおきなストレスがある時には、風邪などの症状が出にくいのです。
よく、ずっと強いストレスがつづいた後、それから解放されたとたんに風邪症状が出てくることがあります。それはストレスのために免疫が抑制されているあいだにウイルスなどの感染が起こり、でも症状がおさえこまれていたということなのです。むかしの人は、それを「気持ちがたるむと風邪をひく」と誤解したわけです。
睡眠と寝起き
人は、眠っているあいだに、メラトニンと成長ホルモンがはたらいて細胞が修復されたり、新しい細胞が生まれたりしています。そして、起きる時間が近づくにつれて少しづつですが、あるていどのコルチゾールが分泌され、起きて活動することに備えてゆきます。特に、楽しいことが予定されている日の朝は、それが順調に起こります。子供のころなら、遠足の日の朝、若いころなら、初めてのデートの日の朝などは、しゃっきり目覚めたのではありませんか?
腰痛や風邪の症状があるとき、起きてすぐにはとても辛い感じがしても、しばらく動いているうちに症状が軽くなるということもあります。これも、コルチゾールの分泌量がだんだん増えることと関係があります。
一言で言えば、コルチゾールは、しゃっきりと元気にさせ、苦痛をかるくさせるはたらきをするのです。まずは、このホルモンがいかにありがたいはたらきをしているのかを理解してください。
メリハリこそが大切
人間のからだが分泌するホルモンや神経伝達物質それじたいに、いいとか、わるいとかということはありません。バランスとメリハリが重要なのです。人間には、ストレスをめぐるサイクルがあります。理想的には、意欲を持って何かに取り組む(ストレス状態、交感神経優位、アドレナリン、コルチゾールが増加する)、達成感や充実感、喜びを得る(ドーパミンが分泌される)、リラックスする(リラクセーション、副交感神経優位、アドレナリン、コルチゾールが減少する)、睡眠をとる(メラトニン、成長ホルモンがはたらく)という4つの相がサイクルをなしていることです。
ところが、現実には義務感や焦燥感にかられて仕事にとりくみ、達成感や喜びが欠けている、
そしてストレスを引きずり、深いリラックスも得られない、というようにのサイクルがゆがめられます。
同じストレスでも、意欲や充実感、喜びを伴うストレス(善玉ストレス)は、人間の活力を増加させ、生き生きとさせるのですが、逆に、それらを欠いているストレス(悪玉ストレス)は、次第にダメージを累積させることになります。あなたにとっての善玉ストレス、悪玉ストレスは何ですか?
もし、仕事で意欲や充実感や喜び
が十分得られない場合には、趣味、スポーツなどで代わりにそれらを得るということも出来ます。人間は善玉ストレスがあることで、後でふかいリラックスや質のよい睡眠が得られるのです。このことが、趣味などを持たない人のほうが抑うつ状態になりやすいと言うことと関係があります。
ストレスの受け方の違い
ストレスについて、ネズミを使った有名な実験があります。まず一つ目。別々のかごに入れた二匹のネズミに電気ショックを与えるのですが、片方のネズミの入ったかごには、電気ショックを止めるレバーがついています。そのレバーを踏むと、両方のネズミの電気ショックが止まるしくみになっています。すると両方に同じだけの電気ショックがあたえられるのですが、レバーを踏めないネズミのほうが参ってしまい、潰瘍などストレスによる様々な症状をあらわしてきます。つまり、状況に対して、主導権を持っている場合と持っていない場合では、持っていない場合(いうなれば『耐えるしかない群』)のほうがダメージが大きいと言うことです。
ストレスは蓄積しさまざまな症状を作り出す
二つ目には、やはり二匹のネズミに電気ショックを与えるのですが、片方のネズミ
には、噛んで怒りを発散するために、木の破片を与えておきます。そうすると、同じストレスでも発散するためのものを与えられていないネズミ(いうなれば『噛めない群』)のほうが参ってしまいます。ストレスは、発散できないと様々な症状に現われてきます。
3つ目には、肉体的ストレスを与え続けた群と精神的ストレスを与え続けた群の比較ですが、肉体的ストレスに対しては次第に順応し、慣れてくるのに対して、精神的ストレスのほうはどんどんたまってゆき、様々な症状があらわれました。長い間には、精神的ストレスのほうがダメージが大きかったのです。
これは、同じ哺乳類でストレスに対して同様な生理的システムを持っている人間にも当てはまると考えられます。いかがでしょう? あなたは「精神的ストレス」かつ「耐えるしかない」かつ「噛めない」群に該当しないでしょうか?
⇒第2部 こうして破局は起こる
うつは、自然な方法で解消することが出来ます
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